前回「撹拌パターンが現像結果に及ぼす影響」記事の最後で、エッジ効果は撹拌には関係なく、乳剤中で起こる効果であり、主に拡散に依存すると書きました。
今日はこの「拡散」について、つまり、現像が進行している最中に乳剤内で起こっていることの一部について説明しようと思います。
はじめにご注意くださいー
以下のイラストは、エッジ効果を生み出すプロセスを説明するため、時間経過によるフィルム乳剤内での現像剤などの動きを非常に単純化したものです。
まず、一番上のイラストをご覧ください。
フィルムには、強い露光を受けた部分と、そこに隣接して弱い露光を受けた部分とがあります。
そしてタンク内を自由に浮遊する現像剤は、フレッシュで強い現像力を持っています。
フィルムの強く露光された部分にある現像剤は(現像による疲弊で能力が)弱くなり、臭化物のような副産物を生成します。
現像剤が作業溶液から乳剤へとどんどん供給され、その領域はどんどん濃くなっていきます。 多くの臭化物もまた生成されていきます。
一方、露光が弱い部分では、現像剤はあまり多くの仕事をしません。ですから比較的新鮮な状態が保たれ、臭化物もあまり生成されません。
そうなると、真ん中のイラストのように、一方では臭化物、もう一方ではフレッシュな現像剤というアンバランスな状態が強くなります。
ここで、拡散が起こります。
拡散は双方のバランスを取ろうとします。臭素は弱い露光部へ、フレッシュな現像剤は強い露光部へ拡散します。もちろん、拡散は非常に限られています。というのも、物質は乳剤内では(作業溶液中と比較して)それほど速く移動できないからです。
さて、フレッシュな現像剤は、強い露光部の境界部分に到達し、現像によってこの境界部分(エッジ)がほんの少し暗くなります。一方で、臭化物は弱い露光部分に到達し、境界部分(エッジ)でさらに現像が進むのを阻害します(一番下のイラスト)。
結果として左から右に、暗い部分→細くて非常に暗い部分→細くて非常に明るい部分→明るい部分となります。
この「細くて非常に暗い」および「細くて非常に明るい」という2本の細い線が、私たちの目にシャープさを強調します。
このようなプロセスを経て生み出された私達の目にシャープさを与える効果を「エッジ効果」と呼びます。
上記の効果は、現像剤が弱くなり、弱いままである場合にのみ作用します。
従来の現像剤は酸化還元システムを持っています。それらには、乳剤中でも現像活性物質の濃度を一定に保つ再生剤が含まれています。
ですから、この酸化還元システムを持たない現像剤でのみ、乳剤中の「拡散」による「エッジ効果」が起こります。
ティム・モーグ(シルバーソルト)