【Column:同感度で撮影された異なるフィルムRollei RPX 400とCR Santaについて】

これらは、数日前の早朝に撮影した写真です。
使用フィルムはRollei RPX 400CR Santa RAE 1000。どちらのフィルムも35mmで、ISO800/27°で露出されています。
現像液はサンタフィルムには Adox Rodinal、RPX400にはSPUR Speed Majorを使用しました。

これらの写真はみな同じISO 800/27°で、同じカメラとレンズで撮影されているのに、非常に異なった印象を受けますね。
見比べてみると面白いことがわかります。

サンタの粒子はRPXより細かいです。が、シャドウディテールに関して言えばRPXほど良好ではありません。
また、シャドウ部が粗い(トーン分離が良好でない)ほど、コントラストは強く見えます。
RPXは、はるかに優れたシャドウディテールを示し、高コントラスト(ハイライト部)をより良くコントロールできます。
私がRPXで撮った写真では、早朝の低位置の太陽によって、非常に高いコントラストとなりました。
双方のフィルムとも、露光に(ゾーン3ではなく**)ゾーン5を測定しました。
35ミリフィルムが露光アンダーの場合、この方法がより実用的なアプローチとなります。

**通常、撮影時のシャドウディテールにはゾーン3を測定します。

サンタの実効感度は、ISO 400/27°のRPX400よりもはるかに低いです。それゆえサンタの粒子はより小さく、そして光に対する反応が少なくなります。
これが、RPX400のシャドウディテールが優れているものの、粒度が大きい理由です。
「粗い感じに仕上げたいから強いコントラストが欲しい」「トーンの美しい仕上がりにしたい」「粒子は細かいのがいい」「粒子は大きい方がいい」・・・などなど、
「仕上がりはこんな風に見せたい!」と思い描くイメージを実現するためには、フィルムのキャラクターをまず理解することが常に重要です。

全ての写真は、カメラとレンズによって撮影されているのですから^^

【Column:同じネガを大量にプリントする場合のポイントと手法】

12月に入り、クリスマスやお正月のグリーティングカード準備に向けてプリント作業が始まりました。
同じネガで多くのプリントを作る場合、効率的に進めることが重要です。
今回は、ご参考までに私モーグが行っているワークフローをご紹介しようと思います。

露光には、ハイランドのスプリットグレードLEDライトを使用します。
これさえあれば適切な露光時間とコントラストをみつけるためにテストストリップを作る必要がないので、スプリットグレードはいつでも私の時間を節約してくれます。
コントラストの変更や一般的なプリント外観の調整は、このマシンで非常に簡単に行うことができます。
また時間の節約に、露出時間は短くしたいものです。LEDライトは短い露光時間であっても高精度の露光を可能にします。

現像には、アドックス MCC現像液を使用します。
私は、最小限の作業溶液量で、高品質の多くのプリントを現像し、かつ現像時間も短くしたい。
MCCのようなプロフェッショナル向け現像液は、このような条件に最適です。

プリント現像が終わったら、停止浴に進みます。
臭いがなく長持ちするので 私は アドックス アドストップ エコ を使用しています。

フィクサーには アドックス アドフィクス プラス を使います。
RCペーパーを低希釈(1+4)の定着液に1分だけ浸します。
またこれらは(展示会に出すような)ファインプリントではありませんから2浴での定着作業は行わず、処理時間を短くすることを優先して1浴で行います。

その後、プリントをすすいで、アドックス チオクリア エコ に1分間入れます。
このウオッシングエイドは非常に経済的かつ効率的です。洗浄時の水と時間を節約してくれます。

次に、プリントを温水を入れたトレイに入れます。温水は20~30分毎に入れ換え、これを4回繰り返します。
この時、各プリント周りに十分な水が行き渡っているよう、1つのトレイに入れるプリントが多くなり過ぎないように注意します。

洗浄後は、コンパード AG スタビライザーを使用してプリントを安定させます。
これを行うことで、太陽光線や(ホコリや汚れた空気など)汚染物質の影響下に置かれるプリントを長持ちさせることができます。
余分な安定剤を除去するために最終のすすぎを素早く行ったら、プリントをホコリの入らない浴室など室内に吊り下げて乾燥させます。
これで終了です。

【サンタフィルム テスト結果報告】

先日テスト中とお伝えしたサンタRAE 1000フィルムのテスト結果をお伝えします。
私モーグはサンタフィルムで、現像液テストをいくつか行い、サンプル写真を撮影しました。
このフィルムについては、前の記事で少し触れましたので そちらもどうぞお読みください。

フィルム露出は ISO 100/21°、 ISO 400/27°、ISO 800/30° で撮影しました。
殆どの現像液で、実際の感度はISO 100/21°でした。この感度ではフルシャドウディテールが得られます。
ですが、このフィルムはISO 400/27° 、さらにはISO 800/30° でも、本当に見栄えが良いのです。
シャドウディテールはもはやそこまで良くはありませんが、当初私が予想していたよりもずっと良いものとなりました。
トーンは興味深いものです。もちろん、ハイライトは現像時間によって異なります。
光量の条件があまり良くないときや、シャッタースピードを速くしたり、被写界深度を大きくしたい・・・など、私はこのフィルムを特に、ストリートシューティングに大変お勧めします。
実効感度は ISO 100/21°ですので、サンタフィルムを非常に明るい条件下で使用し、フルシャドウディテールを得ることができます。

サンタフィルムは薄いフィルムベース上にあります。35mmフィルムで、JOBOリールにフィルムをロードする際に問題はありませんでした。
フィルムの乾きは非常に速く、どの方向にもフィルムが曲がるようなこともありません。

これまで、テストはAdox RodinalFX-39で行いました。 また、ISO 400/27°とISO 800/30°の異なる感度でフィルムを撮影し、【3ストップ露出オーバー】の記事でご説明したのと同じ方法 (Rodinal 1+99、16℃、40 分、 30/300/2)で現像しました。
結果は驚くほど良いです。前述のようにシャドウディテールはあまり良くないのですが、完璧なシャドウディテールはストリートシューティングには必要ありません。
フィルムベースはクリアです。前述の現像方法を使用した場合、ベース&フォグはlogD 0.1です。

Adox MCPとMCCペーパーでは、ネガを2.0〜2.8(ハイランド スプリットグレードを使用)のグラデーションでプリントできました。
粒子はありますが、心地よいものです。ハイブリッド処理の場合、ネガは簡単にスキャンできます。

ということで、この結果を受けて、当ショップでお取り扱いを開始することにしました!!
近日中に発売開始予定です。
どうぞ楽しみにお待ちください^^

【Tips:3ストップ露出オーバーのフィルム現像について】

最近、RPX400 120を3ストップ露出オーバーで撮影されたフィルムの現像サービスをお引き受けしました。
ISO 400/27°の代わりに、誤ってISO 50/18°で撮影してしまい、そのフィルムが私たちの元に届きました。

私モーグは、次の現像方法をテストしたところ、驚くほど良い結果が得られました。
ですので、皆さんとシェアしたいと思います。

希釈:(Adoxロディナル使用)1 + 99
温度:16℃
時間:40分
攪拌:30/300/2

テスト現像を行うにあたり、最初に考慮するべき事は「高希釈された現像液および低い攪拌は、非常に高い補正効果をもたらす」ということです。
これは、非常に露出オーバーのハイライト部を制御するのに重要です。
また、低い温度は現像プロセスを遅くするのに役立ちます。

ここで留意しなければならない点が1つあります。
「ロジナールには、120または135フィルムあたり最低5mlの現像液濃縮液が必要である」ということです。

135mmフィルム1本を250ml容量の小さなJOBOタンクで現像する場合、2.5mlの現像濃縮液が使用されることになりますが、これでは足りません。
ですから、500ml容量の大きなタンクを使用し、その中で135フィルムを1本だけ現像することをお勧めします。
そして、5分ごとに攪拌することをお勧めします。十分に攪拌しないとフィルムに筋が入るリスクがありますので。

以下は、この現像方法をテストするために撮影した、ネガのダイレクトスキャンです(このスキャンからほこりを取り除いていませんのであしからず)。
シャドウディテールはもちろん優れています。大変露出オーバーなのであとは何も期待してはいけませんね^^

【SPURフィルム現像液の機能がザクっとわかる表】

SPUR (シュプール)はフィルム現像のための最新の現像液を作り、また最も正確なデータシートを持っている企業です。
彼らはそれはもう、尊敬に値するような万能で特別な現像液を、これまで数多く提供しているのですが、なかなか伝わりにくい…
そこで概要だけがわかるよう各現像液の機能を示す短いリストを作りました。
フィルム現像は複雑なトピックですから、このほかにもいろいろ書きたいことはありますが、あえて詳細は省いてあります。

各SPUR現像液の主な機能

SPUR Acurol N

  • 優れたオールラウンド現像液
  • 非常にシャープ
  • 一部のフィルムにはそれほど高感度にはなりません

SPUR HRX

  • 非常に微粒子
  • 微粒子現像液でありながら非常にシャープ
  • 微粒子現像液でありながら非常に高感度

SPUR SD 2525

  • 高シャープネス
  • 高詳細コントラスト
  • シャープネス現像液でありながら微粒子

SPUR SLD

  • 高感度
  • 高感度現像液でありながらコントラストはそのまま
  • シャープな粒子

SPUR Speed Major

  • ハイコントラストのためのプッシュ現像液
  • プッシュ現像液でありながら良好なシャドウディテール
  • 高感度

SPUR TRX 2000

  • Kodak Tri Xに最適
  • 高感度
  • 美しいトーン

SPUR Dokuspeed SL-N

  • Agfa Copex Rapid専用現像液
  • 高感度
  • ドキュメントフィルムに良好な調性

SPUR Nanotech UR

  • Adox CMS および SPUR Orthopan UR専用現像液
  • ドキュメントフィルムに良好な調性

SPUR HCT

  • 高コントラスト現像液
  • 最高濃度に到達
  • Foma Retropan 320、 Ilford Delta 3200など低コントラストフィルムに便利

Tip:フィルムプロセッサ選ぶならどれ?

フィルムプロセッサがあったらなぁ・・・!とお思いの方、多いと思います。
そこで今日は、私たちがイチオシの代表的なプロセッサ、JOBO CPEJOBO CPPHeiland TASについて比較検討してみたいと思います!

フィルム現像のためにプロセッサを使うことの利点は、なんといっても時間の節約と、よりコンスタントな結果が得られる、ということに尽きます。
あなたが他の事をしている間も、プロセッサはバックグラウンドであなたのフィルムを高い精度で現像してくれます。
あなたはただ、薬品を交換しに戻ってくるだけです。

それでは以下、項目別に見てみましょう。

必要スペース:
延べ床面積ではJOBO CPEは66x33cm、CPPは96x37cm。CPPはCPEより30cmほど幅が大きく、ちょうどテーブル位の広さが必要です。

Heiland TASは、反転攪拌の場合、デスク上に必要となるスペースはたったの25x32cm。もっともJOBOエキスパートタンクで回転攪拌を行う場合は、より多くのスペースが必要になります。
TASは保管がより簡単で場所を取らない利点があります。

温度制御:
JOBOのプロセッサにはサーモスタット機能があり、確実な温度管理が行えます。サーモ機能がウォーターバス(水槽)の温度を一定に保ち、それゆえ薬品とタンクの温度を同じにします。

TASプロセッサにはこのような温度制御がありません。なぜならTASにはウォーターバスがないからです。温度調整機能がプログラムにビルトインされています。

攪拌スタイル:
CPEとCPP共に回転攪拌を行います。倒立攪拌に比べ薬品の量がはるかに少なくて済むという利点があります。
CPPでは回転スピードを制御できます。

TASは2軸における倒立回転攪拌(回転&ターン)です。こちらは攪拌リズムをプログラム可能、回転スピードも5段階で制御できます。また、コンスタントな攪拌も可能です。 

TASは、JOBOエキスパートタンクにアダプタを装備して回転現像をおこなうことができます。

タンク比較:
JOBOプロセッサは、JOBOタンクのみ使用することができます。
CPEは1500及び2500シリーズのタンクシステムを使用できます。CPPでは加えてエキスパートタンクも使用できます。

Heiland TASは、アダプタを使用することで、ほぼ全てのタンクシステムで使うことができます!

フィルムサイズ比較:
CPEは、最大4x5サイズまでのフィルムを現像できます。
CPPは、最大50 x 60cmまでの印画紙とフィルムを現像できます。

TASは、倒立回転では最大4x5サイズまで現像できます。回転現像では最大50x60cmまで、JOBO CPPと同じタンクを使って現像できます。

セットアップにかかる時間:
TASは水を必要としないため、JOBO のように水が適温になるまで待つ必要がありません。TAS のほうがセットアップを迅速に行えます。

メモリー機能:
JOBO CPPには、異なるプロセス用にプログラムをすることができる内部メモリがあります。CPEにはメモリーがありません。

TASには、一つの現像プロセスのデータを保持できる、オプショナルのメモリ―モジュールがあります。

いかがでしたか?
それぞれのマシンがもつ利点を見比べて、あなたにピッタリの一台をお選び下さいネ。

Update:Adox Rodinalページ!

現在も生産される最古の現像液Rodinal。非常にシャープかつ多才な現像液ゆえ独自のページを作りました。

現ロジナールユーザーの方に情報を少し追加しましたが、将来のロジナールユーザーの方にとっても役立ててもらえるのではと思います^^ 

http://rodinal.jp

Update:RodinalにおけるFomapanの現像データ

私たちは、Adox ロジナール現像液におけるフォマパン100、200および400の感度および現像時間のテストを行いました。

フィルムサイズ:35mm
使用タンク:(もちろん!)JOBO 1510タンク

フォマパン100
露出:ISO 100/21°
希釈・時間:Adox Rodinal 1 + 49、20℃、13.5分
攪拌:30/60/3(最初の30秒は連続倒立攪拌、その後60秒ごとに3回の倒立攪拌を時間がくるまで繰り返します)

フォマパン200
露出:ISO 100/21°
希釈・時間:Adox Rodinal 1 + 49、20℃、16分
攪拌:30/60/3

フォマパン400
露出:ISO 200/24°
希釈・時間:Adox Rodinal 1 + 49、20℃、16分
攪拌:30/60/3

Tips:超露出アンダーで撮影されたSilvermaxフィルムの現像

先日、私たちのラボサービスで、誤って5ストップ露出不足で撮影されたSilvermaxフィルムの現像をお受けしました。

5ストップ露出不足とは、ISO3200/36°でフィルムを撮影したのと同じことになります。
Silvermaxフィルムは露出アンダーを好まないフィルムですので、物事はさらに複雑になります。

お客様のフィルムを現像する前に、まずネガのテストを行いました。
SPURの技術者と相談した後、SPUR Speed Major 現像液を用い、希釈1+7でフィルム現像を行うことにしました。
SPUR Push Masterを20%追加しました。
現像時間は、JOBO CPE-3(回転)で15分、温度は28℃でした。

このテストを始める前、私モーグは、画像は殆ど現れないだろうと、殆ど期待を持っていませんでした。

しかし、結果は予想以上に良いものとなりました。
もちろん、粒子はかなり大きく、シャドウディテールは欠けていますが、画像は良く見えます。
*添付画像はテストネガのものです。

Silvermax ISO 3200/36

【ついに完成!シュプールの新現像液Dokuspeed SL-N】

最高の結果をもたらすことで知られている、素晴らしい組合せのアグファ Copex Rapid とシュプール Dokuspeed SL 現像液。
でも、アグファのこのフィルムは既に製造は行われておらず、在庫分から出荷されているだけの古いフィルムです。
もはや新鮮でないこのフィルムと、以前のDokuspeed SL現像液を使用した場合、ネガ上に不均一な現像スポットが生成されてしまうという問題を発見し、私たちはSPURに報告を行いました。SPURでも同様のテストを行った結果、彼らにも同じ問題が起こり、この結果は共有されました。

そして、この出来事から11カ月が経ち、SPURからこの問題を解決したCopex Rapidのための新しい現像液が完成したとの連絡が入りました。
新製品名は”New”から”N”をもらって、Dokuspeed SL-Nです。
この現像液の使用で、 Copex Rapid 135 は ISO 100/21、 Copex Rapid 120は ISO 80/20 に達しました。
このフィルムにしてはかなりの高感度が得られます!