領域別現像剤枯渇

最近、フィルムの面積に応じて生じる「現像液の枯渇」現象について、良い事例がありました。

500mlのペーパー現像作業溶液が入っているボトルがあります。数週間前に使い、後で使うために保管しておいたものです。
さて、私は24x30cmのペーパーにプリントを作りたいので、24x30cmのトレイを使い、この古い作業溶液を入れました。
しかし、24x30cmのトレイに500mlは、量がとても少ないです。最低でも1000mlの作業溶液が必要です。またトレイは用紙サイズより一回り大きいものを使うことが推奨されています。
ですから、24x30cmのペーパーには30x40cmのトレイを使用し、作業溶液は2000mlとするのが正解でした。
(しかし、正しく攪拌すればジャストサイズ(24x30cm)のトレイでも問題ありません。正しく攪拌するとは、トレイの角を交互に持ち上げて、トレイの中を強く攪拌することです)

この少ない作業溶液量で小さなペーパーストリップでテストプリントをしたところ、問題なさそうだったので、24x30cmのフルサイズペーパーを使ってプリントしました。
すると現像後、小さなテストプリントと大きなストレートプリントではまったく異なる濃度を示したのです。
露光も現像液も同じでした。小さなぺーぺーストリップの時と同じ現像時間で行った時、大きなペーパーの濃度は低くなりました。現像時間を長くしてみることで、少し濃度は高まりましたが、同じ濃度まで達することはできなかった。

このプロセスをさらに2回繰り返したところ、結果はまったく同じでした。現像液は、小さなペーパーを現像するには十分な強さを持っていましたが、大きなペーパーの表面積が大きすぎるため、現像液がペーパーを完全に現像することができなかったのです。

この現象は「領域別現像剤枯渇(area-specific developer depletion)」と呼ばれます。作業溶液の量が少なすぎたり、希釈率が高すぎたりすると起こります。私の場合、作業溶液の量が大判ペーパーに対して少なすぎました。

もちろん、これはフィルムでも起こりうることです。フィルムが大きければ大きいほど、その可能性は高くなります。フィルム現像の場合、希釈率が高すぎると補正効果と勘違いされることがあります。希釈率が高すぎるため、単に現像不足のフィルム(特にハイライト部、それゆえ「補正効果」)になってしまう。ロディナルでよくある間違いです。

下の写真では、大きなプリントの上に小さなテストストリップを載せています(テストストリップ上の白い部分は、ペーパー押さえのために使用した磁石によるものです)。テストストリップは、大きなプリント上の左側にあります。

【Tips : 大きな粒子をプリントする】

私が写真を始めた頃、先生は粒子をできるだけ小さく、目立たなくする方法を教えてくれました。
雑誌や本にも、ネガを粒状にしないためのアドバイスがたくさん載っていました。これは1983年のことで、もちろんそれ以来多くのことが変わりました。
今では多くの人がフィルムで撮影したものを好んで見せますし、そこに多少の粒状性が現れていても見せることを恥じたりしません。

以下、必ずしもネガにではなく、プリントに大きな粒状感を出す方法を説明したいと思います。(しかしもちろん、ネガは常にプリントの仕上がりに重要な役割を果たします)。

まず、高感度フィルムを選びます。通常はISO400/27°が良い選択です。
フィルムを露光するときは、いつもより少し多めに露光します。現像液が求めるよりも1~2DIN多いかもしれません。

ISO3200/36°と宣伝されているフィルム(ボックススピード)を使う場合は、ISO800/30°またはISO1000/31°で露光するのがベストです。
これらのフィルムは、一見非常に高い感度に到達するために必要な積極的な現像を補うために、低コントラスト乳剤を使用しています。そうでなければ、ISO 3200/36°のEIでコントラストが一気に上がってしまいます。

もちろん、現像液は粒子の細かいものではなく、粒状性を強調するものを選びます。
Adox RodinalSPUR Speed MajorSPUR SLDあたりが思い浮かびます。

重要なのはフィルムをプッシュしないことです。逆のことをします。コントラストを通常より低く保ちます。
プッシュするとコントラストが上がり、ハイライトがプリントしにくくなります。
ネガのコントラストが高いときは、トーンを保つためにコントラストを低くしてプリントする必要があります。
低コントラストでプリントすると、通常、プリントの粒子が小さくなりますが、この代わりに、作成した低コントラストのネガを高コントラストフィルターでプリントすることで、プリントに大きな粒子を作ることができます。

Delta 3200 @ 1000, SPUR Ultraspeed Vario (生産終了品), Adox MCP (Grade 3.7)

【カラー引伸機のキャリブレーション】

スプリットグレードをお使いでない場合、特定のコントラストを得るために、カラー引伸機のイエローフィルターやマゼンタフィルターをどのように設定すればよいのか、見当をつけるのは難しいと思います。系統立ててプリントするには、テストをするのが一番です。
注*掲載のテストデータは、使用印画紙および私モーグの引伸機に対してのみ有効なものですので、個々人でテストデータの作成を行う必要があります。

1枚目の写真は、すべてのテストプリントを作成するにあたり使用したハイランド濃度計とストゥファのステップウェッジです。
2枚目は、特定のコントラストを得るために、イエローおよびマゼンタフィルターのダイヤルのどの値を設定すべきかを示しています。
3枚目は、露光時間の修正値を示しています。この修正値はコントラストを変更してもゾーン8の濃度が変わらないようにするためのものです。
例えばコントラストをグレード2から3に変更した場合、ゾーン8で同じハイライトを得るためには、露光時間を1/3ストップ(0.3 logD = 1ストップ)長くする必要があります。

この例はカラー用引伸機の場合です。しかし、白黒用の引伸機であっても、このテストを実施することで使用する材料や機器についてより深く知ることができます。

【Report:Adox Polywarmtone IIの外観について】

期待のアドックスの新ペーパー Adox Polywarmtone II の続報です!

これらは、同じネガを使用して現像し、異なるペーパー(Adox Polywarmtone II と Adox MCC 110)でプリントしたものです。
ポリウォームトーンにはウォームトーン現像液(Adox Neutol WA)、MCCにはニュートラル現像液(Adox Neuol NE)を使用しましたが、これら現像液間では、もたらされる結果は小さなものです。違いは現物を直接見比べたときのみわかる程度です。

ということで、現像液による差異は考慮せず単純にペーパーの違いだけでみてみます。
MCCペーパーのは右下半分に、ポリウォームトーンペーパーは左上です。ボーダーラインを下部と上部に2本の赤線でマークしてあります。
どちらのプリントも、プッシュされたネガのストレートプリントです。したがって、シャドウディテールはあまり良くありません。
ペーパーによってイメージの現れ方が大きく異なっているのがわかります。
Adox Polywarmtone II は美しく、豊かな温かみのあるトーンがあります。シャドウに深みがあり、コントラストが弱く見えることはありませんが、紙ベースはもちろんMCCのピュアホワイトより暖色系であるため、コントラストは技術的に低くなります。

あまりにも多く(の情報)が失われるため、印画紙の性質を説明する際、スキャンしたプリントをスクリーンに表示する方法は適していると言えません。
ですが、この結果は一目瞭然という形でおわかりいただけそうですので、リント結果について文章で補う形でレポートさせていただきました。