今日は、みんなの人気者 ローライのオールラウンド現像液「スーパーグレイン」を少し詳しく見てみたいと思います。
はじめに「スーパーグレイン」のヒストリーを少しお伝えしましょう。 この現像液は、ヨーロッパで非常に人気のある 「Amoloco AM74」の処方に基づいています。 特に、面倒くさがりの写真家はみな、この現像液が大好きです―—同感度であれば異なるフィルムでも一緒に現像でき、しかも結果が全く許容範囲内となるのですから。
通常、現像時間はフィルムによって異なります。現像時間が長すぎるとハイライトの濃度が濃くなり、プリントが困難になります。「AM74」は、ハイライトが高濃度になりすぎないようにする補正現像液だったため、これを避けることができ、それゆえプリント作業をより容易なものにしました。 こんなことから「AM74」は学校の写真部でも人気がありました。 私モーグが学校の写真部にいたときも、この現像液をロジナールと共に使ったことを覚えています。 他の特徴として、微粒子および比較的高いシャープネスがあります。ほとんどのフィルムは「AM74」で公称感度に達しました。
「AM74」の子孫である「ローライ スーパーグレイン 」にも、上に述べた機能があります。
「スーパーグレイン」は、きめの細かい、それでいてシャープな結果を実現できます。 微粒子なのは、現像剤に物理的現像を可能にする多くの錯体形成物質が含有されているからです。また現像液のpH値は、拡散速度と現像速度のつり合いが取れるよう設定されています。 したがって、現像過程の中で物理的現像と化学的現像は、バランスを取りながら同時に起こっています。シャープネスは化学的現像が担当しています。
では、物理的および化学的現像とは何でしょうか? フィルムが物理的に現像されると、銀ハライドは乳剤から移動して現像液中の物質と錯体を形成し、それらの錯体は乳剤中の現像コア(露光を受けた銀ハライド)に移動します。 この現像スタイルは、化学的現像よりも細かい粒を生み出します。物理的現像された銀は、コンパクトで球形です。 一方、化学的現像は、乳剤中の現像液による、露光された銀ハライドの減少を意味します。 化学的現像された銀はより粗くそして糸状です。
少量のヒドロキノンおよび一硫酸塩を使用することで、現像剤は長い貯蔵寿命を有し、また高希釈で美しいトーンを生成します。
あなたが望めば、同感度の、異なるフィルムを一緒に現像することができます。 そしてそれらの結果が満足のいくものになることを望むでしょう。 私は、このようなフィルム現像方法を好んでは行いません。各々のフィルムに対してそれぞれの現像手順で最高の結果が得られるように試みます。 もちろん通常通り、「ローライ スーパーグレイン」は各フィルムの個別現像に使用できますし、優れた結果をもたらします。
今回の記事では、希釈率と現像時間の違いが結果にどのように影響するのかを、テストを交えて見ていこうと思います。
テストには、「ローライ RPX 100 」と「ローライ スーパーパン 200 」の2種類のフィルムを使用しました。 「RPX 100」は、直線の濃度グラフを描き、標準的なフィルムを表します。露出しやすく、また現像し易いです。 「Superpan 200」は、S字型の濃度グラフを描きます。この種のフィルムは、シャドウ部で弱く、中間トーンで強いコントラスト、そしてハイライト部で低いコントラストを持ちます。
「スーパーグレイン」現像液のラベルには、1+9、1+12、1+15 の希釈が示唆されています。
もちろん、これらの間の全ての希釈で行うことができますし、1+9より低希釈、1+15より高希釈で使用することもできます。
私モーグは1+20を好んで使います。
「ローライ RPX 100」では、希釈1+20で現像を行いました。 結果の予測は可能なのかをみるため(規則性を見出すため)に、以下の条件で、現像時間を変えてテストを行いました。 露光:ISO 100/21° 希釈:1+20 現像温度:20℃ 攪拌:30/30/1 現像時間:7分/7.5分/8.5分
下のグラフを見ると、この現像液へフィルムがどのように反応するか予測が立てられることがわかります。
現像時間は常にゾーン8で決定されます。
現像時間が長くなるとコントラストがどのように強くなるかがわかります。
現像時間7分では、N-1.5 現像(低コントラスト)となっています。
緑グラフ(7分)のゾーン9.5で、青色のDIN/ISOグラフのゾーン8と同じ濃度に達しています。
現像時間7.5分では、N-0.75 現像(低コントラスト)となっています。
現像時間8.5分では、N+1 現像(高コントラスト)となっていますね。
赤グラフ(8.5分)のゾーン7で既に、青色DIN/ISOグラフのゾーン8と同じ濃度に達しています。
ここで、現像時間8分のグラフとして投影線(水色の点線)を引いて予測を立てることができます。ゾーン8で水色グラフ(8分)と、青色DIN/ISOグラフは同じ濃度になっています。 現像時間8分くらいのところで、N 現像(通常コントラスト)になることが読み取れますね。
*注*このテストでは、コントラスト調整の現像で通常行われるような露光感度の補正は行っていません。
次に、「ローライ スーパーパン 200」では希釈率を変えてテスト結果を比較しました。 このフィルムの実効感度は、ほとんどの現像液において最高でISO 100/21°です。 そして非常に頻繁に、この感度はより低くなります。 ですが私はこの知識を無視して、ISO 200/24°の公称感度で露出しました。
露光:ISO 200/24°
希釈:1+12、1+16、1+20、1+28
現像時間:8分
温度:20℃
攪拌:30/30/1
グラフのS 字型は、このフィルムの特徴です。これもゾーン8で、希釈率を変更した場合の結果の予測可能性を見ることができます。
もちろん、現像時間が同じであれば、低希釈液は高希釈時に比べて、はるかに高い濃度をもたらします。
低希釈時は高コントラストとなり、高希釈の場合は低コントラスを示すことがグラフから読み取れます。
ゾーン8を見ると、希釈の違いによるコントラストの違いがほぼ等間隔で現れています。
このことから、希釈の違いによっても結果の予測は立てられることがわかります。
1+28の結果は興味深いものです―—グラフはS字型を描いていません。 Sを描くには、もちろんコントラストが低すぎます。 現像剤の量がフィルムを完全に現像するのに十分ではなかった可能性もあるなと、私はそんな疑いをもっていました。でも、36露光フィルムを完全に現像するためには希釈1+20で240mlの作業溶液があれば十分であることを知っていました。ですから、テストストリップの長さが16露光分だけであるので、1+28の希釈でも、現像剤の量は十分に足りていたと考えられます。
では、これら長時間にわたったテストの総括を含め、この現像液について以下にまとめてみます。
「ローライスーパーグレイン」現像液は: ・非常に良好なオールラウンド現像液である ・結果の予測が容易である ・多くのフィルムで公称感度に達する ・粒子が細かい ・有害物質の含有量が非常に少ないため、他の多くの現像液に比べてより”エコ”である ・ハイライトの補正効果は、広い輝度範囲のフィルムを現像する必要がある場合に最適 ・135mmと120サイズフィルムの場合は特に、1本のフィルム内にコントラストが大きく異なるであろう多くの異なる写真が存在するため、このような補正現像液は非常に便利 ・シートフィルムにも使用可能。回転現像は上手く動作する
尚、私はトーンがきれいに見えることから、希釈は1+20をおススメします。
ですが、トーンについて定量化するのは難しく、もちろん非常に主観的なものです。
これを読んでくださっている皆さんが、皆さん自身によってテストを行ない、ご自身で決定されるのであれば、それが一番です!
Tim Moog(Silversalt)