【SPUR Acurol N 現像液について – パート2】

Rodinal の濃度グラフは、ミドルトーンにおいて少したるむ傾向があります。その結果ハイライトが比較的急峻になります。
しかしミドルトーンの低コントラストを現像過多(現像時間を長くする)によって補正しようとすると、ハイライトが急峻になりすぎてしまいます。Rodinal は、標準的な希釈度では補正効果がないことを忘れないでください。

一方でAcurol N にはミドルトーンのたるみがありません。さらにAcurol N はRodinal よりも粒子が小さく、シャープネスが高い傾向があります。

通常、現像液には2種類の現像主薬が配合されています。なかには1種類のものもあります。
一方、SPURの現像液には少なくとも4種類の現像主薬と数種類のアルカリが使用され、Acurol Nには6種の現像主薬が配合されています。
これについて以下に述べます。

まず、現像主薬の種類を増やすことで超加成性*が増し、これにより現像ダイナミクスの増大を得ています。
もちろん現像主薬の違いによって現像結果に与える影響は異なりますから、慎重にバランスをとる必要があります。
また使用される原料が増えれば増えるほど研究開発は難しくなります。

*超加成性:AとB 2種の現像主薬をそれぞれ単独で用いた時の作用の和よりも、AとBを一緒に作用させたときの作用のほうが大きい現象。

これによりSPURの現像液は非常に特殊な機能へのチューニングが可能となっているのですが、この異なる現像主薬による高い活性(超加成性)は、期限切れフィルムにも優れた結果をもたらします(もちろん、フィルム感度は調整する必要があります)。
また現像液がすぐに弱くなりませんから、最小限の作業液で完璧な結果を得ることができます。

次に、SPURは1種類ではなく複数のアルカリを使用することで、溶液の緩衝能を高めています。
また希釈や現像によってpH値をどのように変化させるかをSPURがコントロールできるようなります。

Acurol Nのアルカリは、SPURが意図的に緩衝性を弱めています。
これにより濃度の高いところと低いところのエッジ部分でpH値の下がり方が異なってきます。
その結果、いわゆるエバーハード効果(エッジ効果)が発生し、通常または撹拌を減らした状態でシャープネスが向上します。
回転現像あるいは多攪拌で現像した場合は、エバーハード効果はあまり強くでません。
しかしAcurol Nにはシャープネス向上剤が含まれているため、回転現像でも高いシャープネスが得られます。

これらのことは全て、多かれ少なかれ知られていることです。
実際、SPUR現像剤の現像ダイナミクスは、上記に説明されているよりもっと複雑です。
しかし、もちろん Heribert Schain氏の仕事は最先端のフィルム現像剤を処方することですから、彼が詳細を説明することはないでしょう。

Rodinal は現存する最も古い現像液の1つであり、Adox の尽力により非常に高い品質で今だに提供されています。

Acurol N は同様の機能を持つ、より現代的な現像液です。前回のブログ(パート1)から述べてきたように Acurol Nは、Rodinal の弱点のいくつかを取り除くことに成功しています。

どちらの現像液も、経験豊富な暗室作業者に多くの実験の余地を与えてくれます。

Tim Moog(Silversalt)

【SPUR Acurol N 現像液について – パート1】

SPUR Acurol Nは、以下のようにAdox Rodinalと非常によく似た特徴を持っています。

  • 非常に高いシャープネス
  • 高希釈
  • 美しい粒状性
  • 超長期保存可能

ここではSPUR Acurol Nについて、Adox Rodinalと比較しながら述べていきたいと思います。

多くのロディナルのコピー品の場合、現像液が古くなると、現像時間のテストを新たに行う必要があります。オリジナルのAdox Rodinalは、古くなっても非常に長い時間、同じ現像時間を維持します。保存期間が長いAcurol Nも、古くなった現像液でも新鮮な現像液と同じ現像時間を長い間、安定して使うことができます。

Adox RodinalとSPUR Acurol N では、現像液が大きく異なるため、現像のダイナミクスは大きく異なります。ロディナルの現像結果は、現像時間ではうまくコントロールできません。希釈でコントロールするのがよいでしょう。一方、Acurol N は現像時間と希釈でコントロールができます。Rodinalを高濃度に希釈するとフィルム(特にハイライト部)が完全に現像されないため、補填効果が生じます。高濃度に希釈したAcurol N は、ネガを完全に現像しシャープネス(エバーハード効果)を高めます。

どちらの現像液も、異なる攪拌リズムに強く反応します。撹拌が強ければコントラストが高くなります。また、Acurol N は撹拌を減らすことで、より強調された粒子が得られます。

なおこれらの現像液では、もちろん(他の現像液と同様)スタンド現像はお勧めできません。スタンド現像は現像ムラやフィルム感度低下、コントラスト低下を招く可能性が高いため、フィルムの現像方法としては最悪です。適切な現像には攪拌工程が必要です。

Acurol N は非常に汎用性の高い現像剤です。データシートに記載されている現像時間は、優れた結果をもたらします。しかし、実験したい写真家にとってAcurol N は結果を自分の好みに調整するための多くのパラメーターを提供してくれます。これは、ドイツで最後に研究を行ったフィルム化学者の一人であるHeribert Schain(ヘリバート・シェイン)氏による、現代のフィルム現像剤の真の傑作と言えます。

下の写真は、Ralf Sänger がRollei Ortho 25 120で撮影したものです。
木のシャープさが際立っているのがわかると思います。3枚目の写真は、2枚目の写真のネガのディテールを示しています。

現像液:Acurol N
フィルム:Rollei Ortho 25 120
希釈 :1+200
間 :33分
温度 :20℃
撹拌 :30/300/2

フルサイズ画像は下記をクリックしてください。

画像1
画像2
画像3

画像は直接スキャンしたものです。
画像処理ソフトでコントラストやシャープネスを変更していません。

【Column:同感度で撮影された異なるフィルムRollei RPX 400とCR Santaについて】

これらは、数日前の早朝に撮影した写真です。
使用フィルムはRollei RPX 400CR Santa RAE 1000。どちらのフィルムも35mmで、ISO800/27°で露出されています。
現像液はサンタフィルムには Adox Rodinal、RPX400にはSPUR Speed Majorを使用しました。

これらの写真はみな同じISO 800/27°で、同じカメラとレンズで撮影されているのに、非常に異なった印象を受けますね。
見比べてみると面白いことがわかります。

サンタの粒子はRPXより細かいです。が、シャドウディテールに関して言えばRPXほど良好ではありません。
また、シャドウ部が粗い(トーン分離が良好でない)ほど、コントラストは強く見えます。
RPXは、はるかに優れたシャドウディテールを示し、高コントラスト(ハイライト部)をより良くコントロールできます。
私がRPXで撮った写真では、早朝の低位置の太陽によって、非常に高いコントラストとなりました。
双方のフィルムとも、露光に(ゾーン3ではなく**)ゾーン5を測定しました。
35ミリフィルムが露光アンダーの場合、この方法がより実用的なアプローチとなります。

**通常、撮影時のシャドウディテールにはゾーン3を測定します。

サンタの実効感度は、ISO 400/27°のRPX400よりもはるかに低いです。それゆえサンタの粒子はより小さく、そして光に対する反応が少なくなります。
これが、RPX400のシャドウディテールが優れているものの、粒度が大きい理由です。
「粗い感じに仕上げたいから強いコントラストが欲しい」「トーンの美しい仕上がりにしたい」「粒子は細かいのがいい」「粒子は大きい方がいい」・・・などなど、
「仕上がりはこんな風に見せたい!」と思い描くイメージを実現するためには、フィルムのキャラクターをまず理解することが常に重要です。

全ての写真は、カメラとレンズによって撮影されているのですから^^

【Tips:3ストップ露出オーバーのフィルム現像について】

最近、RPX400 120を3ストップ露出オーバーで撮影されたフィルムの現像サービスをお引き受けしました。
ISO 400/27°の代わりに、誤ってISO 50/18°で撮影してしまい、そのフィルムが私たちの元に届きました。

私モーグは、次の現像方法をテストしたところ、驚くほど良い結果が得られました。
ですので、皆さんとシェアしたいと思います。

希釈:(Adoxロディナル使用)1 + 99
温度:16℃
時間:40分
攪拌:30/300/2

テスト現像を行うにあたり、最初に考慮するべき事は「高希釈された現像液および低い攪拌は、非常に高い補正効果をもたらす」ということです。
これは、非常に露出オーバーのハイライト部を制御するのに重要です。
また、低い温度は現像プロセスを遅くするのに役立ちます。

ここで留意しなければならない点が1つあります。
「ロジナールには、120または135フィルムあたり最低5mlの現像液濃縮液が必要である」ということです。

135mmフィルム1本を250ml容量の小さなJOBOタンクで現像する場合、2.5mlの現像濃縮液が使用されることになりますが、これでは足りません。
ですから、500ml容量の大きなタンクを使用し、その中で135フィルムを1本だけ現像することをお勧めします。
そして、5分ごとに攪拌することをお勧めします。十分に攪拌しないとフィルムに筋が入るリスクがありますので。

以下は、この現像方法をテストするために撮影した、ネガのダイレクトスキャンです(このスキャンからほこりを取り除いていませんのであしからず)。
シャドウディテールはもちろん優れています。大変露出オーバーなのであとは何も期待してはいけませんね^^

Update:Adox Rodinalページ!

現在も生産される最古の現像液Rodinal。非常にシャープかつ多才な現像液ゆえ独自のページを作りました。

現ロジナールユーザーの方に情報を少し追加しましたが、将来のロジナールユーザーの方にとっても役立ててもらえるのではと思います^^ 

http://rodinal.jp

Update:RodinalにおけるFomapanの現像データ

私たちは、Adox ロジナール現像液におけるフォマパン100、200および400の感度および現像時間のテストを行いました。

フィルムサイズ:35mm
使用タンク:(もちろん!)JOBO 1510タンク

フォマパン100
露出:ISO 100/21°
希釈・時間:Adox Rodinal 1 + 49、20℃、13.5分
攪拌:30/60/3(最初の30秒は連続倒立攪拌、その後60秒ごとに3回の倒立攪拌を時間がくるまで繰り返します)

フォマパン200
露出:ISO 100/21°
希釈・時間:Adox Rodinal 1 + 49、20℃、16分
攪拌:30/60/3

フォマパン400
露出:ISO 200/24°
希釈・時間:Adox Rodinal 1 + 49、20℃、16分
攪拌:30/60/3

現像データ : Rollei RPX 100 135 x R09現像液

東京オルタナ写真部さんとのコラボによる アナログ写真のビギナーワークショップに向けて、モーグはR09現像液におけるRollei RPX 100 135の現像時間のテストを行いました。
フィルムはISO 100/21で露出、R09現像液は1 + 25の希釈で現像しました。温度は20℃、現像時間12分、 攪拌30/60/3で行いました。

下の濃度グラフで分かるように、結果(赤色曲線)は非常に良好なものとなりました。
シャドウ領域 ☞ ゾーン1の濃度は0.12です。これは非常に良好なシャドウディテールが得られることを示しています。

ミドルトーン領域 ☞ 最も高いハイライトに至るまでの残りの曲線部は、青色で示したDIN / ISO標準グラフとほぼ同じであり、これはプリントを非常に簡単にします。

ハイライト領域 ☞ ゾーン9からは補正効果が見られます。これはハイライトをコントロールし、ハイライトをプリントするのに役立ちます。